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悪者会議
とある夜の街に、小さな建物があった。
「人間ってよくわしを敵にまわすんじゃよなぁ。」
赤鬼の紅牙が自分を指して言った。
「でも、泣いた赤鬼は違うじゃん。」と、銀色の狼、ソードが言う。
「俺なんか、人間食わされてるぜ。たまったもんじゃねえぜ。」
ソードはツメでテーブルをコンコンとつつく。
「それはキツい。アイツらはマズい。欲望と悪と憎しみでいっぱいじゃ。美味しいのかね?」
ソードは腕を「ひ」の字にして知らないポーズをした。
「つか人間、自分が食われてる話作ってるよな。ヘンタイなのかアイツら。」
すると、チリンチリーンと、少し錆びた鈴が鳴り、ドアが開いた。
「2人とも、来るの早いわねぇ。」
紫の魔女がやって来た。顔は老いてしわくちゃ。
「おお、ポイズン。久々だな。」
「おお。久しぶりねぇ。」
ソードと「ポイズン」と呼ばれた紫の魔女がハイタッチをする。
「何の話をしてたんだい?」
「わしらよく悪者扱いされるよなっていう話じゃよ。全く、人間って奴は……」
紅牙がため息をつきながら答える。
「ポイズンも、毒リンゴ作ったんだよな。」
「らしいがね、作りたないわ! あたしゃね、可愛い娘さんが好きだからね、殺したないわっ!」
ポイズンは腹を立てて叫ぶ。
「俺だって、人間なんか食いたないわ!」
「わしだって、もうボコボコにされるのはまっぴらごめんじゃ!」
2人は魔女に同意した。
3人とも同じだ。もうこれ以上の茶番なんていらない。
ソードが立ち上がり、カウンターへ向かう。ホコリをかぶったカウンター。そこから1つのグラスを取り出す。
「てか、よりによってなんで俺たちなんだ?」
「わしもそいつが分かればのぅ……。」
「あたしだってねぇ……。」
どうしてなのだろう。奴らは自分たちの何を知っていると? 腹が立ってきた。
ソードは手にあったグラスを床に叩きつけた。キラキラ光りやがって。憎い。
急に飛んできた割れたグラスの音に、2人は一瞬肩をビクッと上げた。
「人間なんか、嫌いだわ。」
ソードがそう吐く。
「あたしだって……あーゆー話を書きやがる輩は嫌いじゃよっ!」
ポイズンもそう吐き捨てると。
チリーン……。
錆びた鈴が鳴った。もう、誰も来ないはず……。
誰だ? と3人ともそう思い、ゆっくり開く扉を見つめた。そこには……
黒いワンピースを着た、人間の女性が立っていた。鬼たちを見るやいなや、女性は指を指して。
「ば、バー荒らしじゃない!!」
「「!」」
「やっべ」
ソード、紅牙、ポイズンは、女性と扉の間を強引にすり抜けた。
「!! ちょっとっ! 待ちなさいよッ!!」
「ヤーだね!!」
「じゃあな、娘さんっ!」
「貴様らの言うこおなんぞ、聞かんわ!」
3人は、スタコラサッサと夜の街に姿を隠した。
こんな私も、彼らを悪者にしてしまうのである。
終
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