1人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「アタシさー昨日シムタクに告っちゃったんだよね〜!」
自称、親友のマリアの無邪気な物言いに、私は絶句した。
シムタク…クラスメイトの志村拓哉の渾名。
無言の間が続く。
女生徒二人だけ、居残りになった教室の窓からは薄暗い鈍色の空が見えた。
いつの間にか強く降り始めた雨の音が響いている。
私の心を代弁する様に。
「どしたん?あーやっぱり高台に住むお嬢様には庶民の恋心なんか理解できないかーそ〜だよね〜でもでもね!あいつ満更でもなかったよ!うつむいて2回うんうんって言ってからありがとうってさ…」
彼のその癖は知っている。毎日観察していたから。困った時の彼の癖。
真顔で目を見開いている私の様子に気付きもせず、マリアは続ける。
「聞いて聞いて!今週の日曜、デートの約束取り付けちゃった〜何着てこ?やっぱ年頃の高校生にはエロいので決まりかな〜童貞を殺す服とか!」
「へえ…」やっとの生返事を返す私にマリアは続ける。
「あー瑠璃はお嬢だから分かんないか〜つまりね…」
あけすけな話題をまくしたてる茶色い唇。
歳不相応なルージュが上下している。
耳に入るのは更に激しさを増した雨音。
最初のコメントを投稿しよう!