巷に雨が降るように

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今年の春、クラス最初のホームルームで、五十音順の自己紹介が行われた。 新卒らしい担任の提案の元、各人にニックネームを皆で付けよう等と云う、今思い返すと前時代的な事が行われた。 名前の語呂の良い者は略したり、芸能人に近い名前を安直に付けられた。 哀川君はショウ。神田君は、マサキ。件の志村拓哉君はシムタク。 まるでホストクラブの源氏名だ。 容姿だけでノッポ、ゴジラ、らくだ等と付けられる人もいた。 マリアは本名が広瀬まりあ、なのでマリアのまま。 「笛木瑠璃(ふえきるり)です…」 名乗った私に早速、 「えー?フエキのり?じゃあノリ。ノリで決定!」 野次に似た声にため息をつく。 昔からよく言われた呼び名だ。幼稚さに内心呆れる。 「あの、先生」 手を挙げる男子がいた。 「何だい?キムタク。あ、違ったシムタク」 「志村です。こういうのガキっぽくないですか。止めません?」 ざわついていた教室内が静まり返った。
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