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急に強い雨が降り出した。
「あ。困ったな…。」
うちの会社は駐車場の屋根ない。
会社の入っているビルまでには距離がある。
そんな日に限って、傘を忘れてしまうなんて…。
いつもの場所に車を駐車した。
「ついてないな。私の貴重な自由時間なのに…。」
私は、結婚後互いの自分の時間を作るために、
早めに職場に出社し、フリースペースで本を読んだり学習の時間に充てていた。
朝起きてからが一番集中力が持続できるということもあり、日々の日課としている。
最近では、私と同じように早く出社し資格の勉強をする後輩まで出てきた。
たまに勉強を教えるなどコミュニケーションの場にもなっている。
早くフリ―スペースでゆっくりしたいが、傘がない。
服が濡れた状態で仕事もしたくない。
仕方がない。車内で本でも読もう。
始業時間よりも2時間も早いこともあり、駐車場には車は少ない。
いつも私より早く来ている斜め向かい側の車の車内にも人がいる。
きっと私と同じように傘がなく、雨宿りをしているんだろうか。
私は、斜め向かいの車にいる男と目が合った気がした。
なんとなく気まずくなり、椅子に深く座った。
気分を変えようとお気に入りのいつもの曲をかけた。
コンコンコン
車の窓になにかが当たる音がした。
窓を見ると向かいの車の男が強張った表情で傘をさして立っていた。
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