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逆転劇
帰りにコンビニに寄ってプリンを買った。伊織も何か買い物をしていたが、それが何だったのかは後で身を持って知る事となる。
「これ、マジで飲むの?」
「当たり前っすよ。俺のお願い、なんでも聞いてくれるって言ったじゃないっすか」
「そうだけどさぁ」
風呂を済ませ、リビングに戻ったところで伊織に渡されたのは怪しいネーミングのロゴが入った小瓶だった。どうやら精欲増強剤らしいが、こんなモノ飲んだ事の無い俺にとっては躊躇う事態だ。
もう一度正気であるかと確認しようとして伊織を見れば、彼はすぐ隣りで缶ビールを開けてゴクゴクと勢い良く飲み干していた。
「……え、あの……伊織さん?」
「ん?なんすか?つーか、早く飲んで下さいよ。それ、めちゃくちゃ高かったんすからね」
な、なんだよそれ。嫌な予感しかしないんだけど。
念の為、俺にこの小瓶を渡した意図を伊織に聞いてみた。
「それは分かるけど……これを飲ませてどーすんの?こんなの無くたって、俺はちゃんと……」
「俺、もっと安心したいから」
伊織は俺の腰をグッと抱き寄せ、微かに頬を赤らめながら誘って来る。
「晴弘さんに沢山求められてみたいからさ、それ飲んでよ。んで、俺をもっと欲しがって」
「なっ!」
な、なんだその爽やかエロスマイルは!!
俺の方こそ真っ赤になって、その言葉と顔にムラムラしてしまう。
俺だってまだかろうじて20代だ。性欲が無い訳じゃないけど、伊織の方が9つも若い分、元気が過ぎるのだ。
彼が顔を近づかせて来るだけで俺はドキドキしてしまい、その圧に耐えかねて小瓶の蓋を開けては中身を一気飲みした。
「うぇ、マズ!」
そしてあまりの不味さに小瓶から口を離すと、すかさず伊織にキスをされ、口腔内を舌でひと舐めされてしまう。
「っ……んん……は、あ……伊織?」
「ん、……確かに美味しくはないっすね」
いやいや、え、舐めた?お前がそれを口にしたら、俺死んじゃわない?
恐怖でワナワナと震えていると、伊織はニッコリと微笑んで「ベッド、行きましょ」と軽く誘うのだった。
身体が熱いなんてもんじゃなかった。下腹部がずっとキュンキュンしていて、中心部が痛い程に勃起して、溜まった精をどこかに吐き出したくてとにかく刺激が欲しかったのだ。
そんな俺は伊織の上に跨り、慣れない体制で自ら腰を動かしていた。
伊織は俺の腰を撫でながら、下から劣情の籠もった眼差しで見上げて来る。
「ぅ、ああ……っ……伊織、伊織ぃ……!」
「上手っすよ、晴弘さん……すげぇ気持ちいい」
「ほ、んと……?あんっ……あっ!……き、きもちいい?」
「うん。さいっこー」
俺はぎこちない腰使いで、自分の中を埋める杭を出し入れする。
今日は最初からゴムを着けてないし、既に1回中に出されてるから、垂れてくる精が摩擦で泡立ってイヤラシイ音を立てていた。
俺は抑え切れない欲求を満たしたくて、ひたすらに伊織の熱を貪っている。先程飲んでしまった精力増強剤のせいかも分からないが、俺も伊織も休憩無しにずっと動いては、治まらない興奮を発散させていた。
「い、いおり……っ、もぅむり……んっ、腰あがんないぃ……」
身体はまだまだ熱いのに、体力が続かない。
みっともなく涙目で懇願すれば、彼は優しく俺を抱き寄せてキスをしてくれる。
「ん……、じゃあ、俺が代わりに動いてあげる」
「んぁあっ!はぁ……ああ!」
抱き締められたまま、下から激しく突き上げられる。内壁を抉るように硬い竿が擦れて、いつもより強度があるからか、普段当たらないような所にも当たってしまうのだ。
「あっ、伊織ぃ……そこ、だめっ!ぐりぐりやぁ……!」
「っ……!晴弘さん……あんま締めないで……!すぐ出そう!」
そんな、締めないでなんて無理な話しだ。
俺も自分で制御出来ない快楽をどうして良いのか分からずに、ただ感じるままに、求めるままに伊織に縋りつくだけだった。
……うわ……今日、本当にヤバイかも。
心も身体も愛しい人に染められていく。それでもまだまだ足りなくて、彼の熱い皮膚に爪を立ててしまう。
「ごめっ……いおり、んぁあっ!……ごめん……っ」
まるで駄々をこねて泣き喚く子供のようだ。
こんな醜態を晒して恥ずかしいが、それでも伊織は俺をあやすように頭を撫でてくれる。
「……大丈夫っすよ、晴弘さん……っ、すげぇかわいいから……っ」
かわいいよ、と、再度耳元で囁かれると、その声にまた中が締まってしまう。
こんなに敏感になって、欲しくてたまらなくて、きっと明日は疲弊しきって筋肉痛になり、1日中ベッドの中で寝てるに違いない。そんな未来が予想出来るのに、この行為が止められないのだ。
伊織も俺と同じなのか、切なそうに息を吐いてはより一層腰のピストンを速めた。
「ぁあっ!あ……んっ!はげし……!」
「くっ……ごめん、晴弘さん……っ、また出すよ……っ!」
「んあっ、あ、……ぁあ!いい……きてぇっ!」
腹の奥に、熱い精が遠慮無しに注がれる。
……あ……伊織のが、俺の中に……っ。
「んんっ……!」
そう思っただけで、俺もすぐに達してしまっていた。
いつもは中心部の竿を手のひらで擦って刺激を与えないと射精出来なかったのに、今回は違う。伊織の熱に感じて、俺も自然と精を吐き出せたのだ。
それは俺だけでなく、伊織も分かっているようだった。
「はぁ……ちゃんと俺でイってくれましたね……晴弘さん、今日マジでかわいいっすよ」
「あぅ……全部お前のせいだろ……ばーか」
力無く彼の胸にもたれかかり、俺は涙を滲ませながらぼやく。
……疲れた。でも……まだムズムズする。
「晴弘さん?」
伊織に抱き締められながらも、俺は僅かに腰を揺らして熱を求める。
「んぁっ……も、……二度とあんなもん飲むか、バカ伊織……っ」
身体が熱い。もっと伊織が欲しい。
俺は背骨を反らすように上半身を起こすと、腹いせとばかりに中のモノを締め付けてやった。
「ちょ、待って……晴弘さん!?」
「やだ……っ、俺がこんなんなってんの、お前のせいなんだからな……!責任取れよ!」
なんでもするとは言ったが、まさかこんなになるとは思いもしなかったのだ。
俺は伊織に抱き潰される覚悟だったが逆に彼を翻弄してしまい、その戯れは明け方まで続いたのだった。
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