誓いの言葉

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誓いの言葉

 恋人と泊まると伝えたら、思いっきり楽しめよ、なんて友人に肩を叩かれた。  コテージの外では既に陽が沈み、灯りを点けるのさえ面倒でカーテンを全開にしていた。それに、今夜は満月だから周りが見えないとかは無くて、そんなに不自由もしていなかった。 「はぁ……あ、……晴弘さん……っ」 「んん、っ……あ、ぁあ……!」  もう何度目かも分からない精を腹の中で受け止めて、俺は熱い吐息を零す。  伊織も一度腰を引いては、俺の中からソレを抜いた。 「……ん、……晴弘さん、身体大丈夫?へーき?」  背中から抱き締められ、下腹部を撫でられる。その仕草が愛しくて、俺はその手に手を重ねるのだ。 「うん……ちょっと疲れたけど、大丈夫だから……」  伊織だ。ここに居るのは、俺の大好きな伊織だ。  離れている間、俺はずっと恋い焦がれていたのだ。仕事をしていても、食事をしていても、風呂に入っていても、誰かと話していても、常に思い出していたのはこの人だけ。  添えた手の指を絡め、恋人繋ぎをする。  同じ男の手だけれど、伊織のは特別、俺の手より大きくて安心できるのだ。 「……伊織、」 「ん?なに?晴弘さん」 「……呼んでみただけ」 「なんだよそれ……かわいい」  伊織は俺の耳の裏に口付けし、優しく笑う。  少し、本当に少しだと思うが、伊織が俺に対して敬語を使う回数が減っているように感じられていた。だけどそれで馬鹿にされているとは思わないし、むしろ対等な立場になりつつあるんだと、そんな嬉しささえ感じられる。  ……それどころか、潔癖症も前より治ってきてるんじゃないのか?  今までだったら、一度中出しされたら一々綺麗に拭いてから次へと進んでいたのに、今日はそれが一切無くて、連続して何度も中に出されたのだ。俺的には大歓迎だけど、もし伊織が潔癖症じゃなくなったら……  俺はもう、彼の特別にはなれないんじゃないかという不安さえあったんだ。  俺は首だけで後ろを振り向いて、伊織の唇にキスをする。そして誘うように舌を出し、絡めてはまた欲しがって見せた。 「……っ伊織、もう1回……」 「ん、いいよ……俺もシたい」  灯りの無い部屋で、ギシッ、とベッドが軋む。  伊織の精液でドロドロに解れていた後孔にまたソレが入って来ると、形を確かめるように締め付けた。 「……ははっ……アンタの中、すげぇ柔らかい。……マジ気持ちいい」 「あ……伊織も……っ、まだ硬い……」 「うん。だって……この日の為に1週間オナ禁したし」  まだまだ離してなんかやんねーよ、と、彼はゆっくりと腰を動かし始める。  転勤でこっちに来て2ヶ月以上。俺もずっと伊織の事だけを想っていた。だから今こうして一緒に居られるのが、嬉しくて嬉しくてたまらない。  伊織は俺の身体を触りながら、匂いを嗅ぎながら、愛を深めようと貪ってくる。その激しさにクラクラと目眩がしそうな程満たされて、俺も伊織を離したくないと強く思う。  ……今はいいかもしれないけど、あと何年、伊織と離れて暮らさないといけないのかな。本当なら来年の4月には同棲を始めて、2人だけでラブラブな毎日を送れるはずだったのに。 「……晴弘さん?なんか考え事してんの?」 「へ?」 「ボーッとしてるから」  腰を止めると、伊織はくっついたまま俺の顔を覗き込んで来る。  そのイケメン顔にキュンとしながらも、俺は素直にそれを話す。 「……伊織と……また離れるの、嫌だなって。こんなに好きなのに、一緒に居られないとか……寂し過ぎる」  伊織と離れたくない。そう思っていたら、後ろの口を知らず知らずのうちに締め付けていたらしい。伊織もソコを更に大きくすると、ぐりぐりと奥までねじ込んで来ては耳たぶを甘噛みして来る。 「……晴弘さんを、このまま連れて帰りたい」 「っぅあ!……あ、んん……っ」 「俺も、アンタと離れるのは嫌だ……っ、ずっと側に居て欲しい」  再び身体を貫かれて、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音が俺達の間を繋ぐのだ。  ……こんなに激しくされたら、またすぐにイってしまう。 「んあっ、伊織、いおり……っ!」 「……んっ!」  また、シーツに白濁を垂らしてしまった。いいトコロを擦られたせいで下半身がヒクヒクと痙攣し、腹の中にも追加の熱が注がれる。 「……あ……あつい……」  俺はだらしなくベッドにうつ伏せになり、呼吸を整える。伊織も自分の髪をかき上げながら、なにか飲み物取って来ますよ、とクールな面持ちで寝室を出て行ってしまった。  ……あー、なんか、頭の中がふわふわしてる。さっきもセックスしながら伊織に嬉しい事言われた気がするけど、よく覚えていない。  俺は上半身を起こし、カーテンの開けっ放しだった窓の外を見上げた。ここからでも良く見える程に星が沢山瞬いており、綺麗だな、なんて漠然と思う。  こんな静かな場所で愛する人と2人きり。だけど、俺達ならきっと退屈しないでずっと一緒に生きていけるんだろうなと、そんな根拠の無い自信さえ浮かんでいた。  好きな人とずっと一緒に。それが男同士でも許される事なのなら、たとえ重いと言われようと、俺は伊織と添い遂げたいと思っている。  ……伊織と結婚、出来たらなぁ。 「晴弘さん」 「おわっ!」  突然、頭の上から何かが被せられた。それが替えのシーツなのだと分かると、俺はため息混じりに伊織に注意しようと口を開く。 「こら。こんなぐちゃぐちゃにしたら、せっかくのキレイなシーツが」 「待って。そのまま」 「?」  被せられたシーツを取ろうとすると、ベッドに上がって来た伊織にその手を握られた。そして、正面から優しい瞳に見つめられて、俺の好きな声がキラキラと空の星のように降り注いで来る。 「……晴弘さん……健やかなるときも、病めるときも、富めるときも、貧しいときも、どんなに遠く離れていても……俺は晴弘さんの事を1番に想い、大切にし、愛すると誓います」 「……へ?」  突然の台詞に、一瞬何が起こったのか分からなかった。  まるで結婚式の誓いの言葉のようで、もしかして俺がさっき伊織と結婚したいと思ったから、それが妄想で幻覚になり、理想が想像で……って、あれ?なんだっけ?訳が分からなくなってきたぞ。  頭がパンクしそうだ。ここは本当に現実か?  俺の手を握っていた伊織は、するすると指をなぞって来る。見れば、俺の薬指にはいつの間にか指輪がはめられていた。  思わず顔を上げると、彼はクスッと笑ってその手にキスをくれるのだ。 「……晴弘さんは?……誓ってくれる?」  夢、かな……?でも、例えこれが本当に夢だとしても、答えは1つしかない。  俺も頷いて、伊織の手を握り返した。 「……ち、誓います。……俺も、伊織を愛してる、から」  この人を誰にも渡したくない。だから、俺も本気で欲しがらないと。  2人だけしか居ないこの静かな場所で、俺達はお互いに抱き合っては、深く長い、誓いのキスを交わすのだった。
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