確信犯かよっ!

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確信犯かよっ!

 夜中にふと目が覚める事は珍しくない。歳を取るごとにその回数が増えていっているような気がするのは悩みの種だが、まだ有り難い事に、目を閉じれば数秒後には再び眠りにつけるのだ。  が、今回はどうもそうはいかないらしい。  ……なんで、よりによって今なんだ。  いわゆる、生理現象というやつだ。昼間に風呂場で抜いてもらったのに、やっぱり1回だけじゃあ1週間分を消費する事は出来なかったらしい。  こっそりとトイレに行って抜いて来ようと思ったが、その身体を起こした時点で柔らかいベッドが沈み込み、隣りで寝ていた伊織をも起こしてしまったらしい。晴弘さん?と眠そうな声で呼び止められて、俺はギクリとした。 「あ……ごめん。起こした?」 「ん、……別にいーけど……どうしたんすか?」  例の如く、彼はパンツ一丁で寝ていた。そんな身体を起こしてくるもんだから、俺もついつい彼の下半身に目が行ってしまう。  ……おいおい、嘘だろ。伊織も勃起してんじゃん。  これは非常にマズイ。2人共同じ現象が起こっていたら、それは間違いなく盛り上がってしまうではないか。  俺は慌てて「ちょ、ちょっとトイレに」とベッドから降りようとした。けれど腕を引っ張られてしまい、伊織の懐に背中からすっぽりと収まってしまう。 「伊織っ?」 「……なに?1人で抜く気?」  ば、バレてる。  俺はなんとか誤魔化そうと脚を閉じたが、後ろから俺の履いていたブカブカのズボンを腰の辺りから引っ張られて、パンツごと脱がされてしまう。その勢いで尻の位置がズレてしまい、俺は深く伊織の胸に寄りかかる形となってしまったのだ。 「ちょ、なにすんだよ!」 「しっ、夜中っすよ」 「でも……!」  伊織は俺を抱きかかえるようにして背後から腕を伸ばし、既に勃っていたそこに触れる。それから俺の耳の後ろに鼻を埋めては、思いっきり深呼吸をするのだ。 「ん……はぁ……やっぱたまんねぇな」 「はぁ?」 「晴弘さんのニオイ、俺好きだわ」  知ってるっすか?と、伊織はくんくんと匂い続けながら言う。 「人間のうなじや耳の裏って、体臭がキツイ場所なんすよ」 「!?や、やめろよ、嗅ぐの!!」 「なんで?俺、晴弘さんのこのニオイ、すげぇ好きなのに」  30手前の男なんて、加齢臭がしてもおかしくない。そんな事を言われれば、誰だって嫌がるもんだ。  だけど伊織は匂うだけでなくキスまでも落として来て、俺の羞恥心を煽りまくる。 「……あー、マジですげぇ興奮する……ヤバイかも」 「や、やだ……っ……やめろって!」  耳元ではチュッチュッとリップ音がして、下半身は伊織の手で抜かれている。そんな挟み撃ちに耐えるように彼の腕にしがみついて、俺はだらしなく腰を弾ませていた。 「あっ、やだ……っ、なんで……!」  すげぇムラムラする。なんでたよ。  もっと刺激が欲しくって、自然と脚が開いてしまう。  伊織は俺の中心部を擦りながら、また爆弾発言をかましてくる。 「晴弘さん、チーズいっぱい食べたっしょ?」 「へ……っ?」 「チーズってね、1種の媚薬効果があるらしいっすよ」 「!?」 「あんだけ食べてりゃあ、そりゃムラムラもするわ」  実際俺もやべぇし、と、腰の辺りに硬くなったそいつの存在を俺も確認出来てしまっていた。 「か、確信犯かよっ!」 「まぁね」  そんな事より、と、伊織は更に激しく手を動かす。 「そろそろイきそぅ?すげぇ我慢汁垂れてっけど」 「んあっ!それ、やだぁ……あっ!」  片手で竿部分を擦り上げられながら、もう片方の手で根元の袋をやわやわと揉みしだかれる。  俺は双方の刺激に耐えられなくて、伊織の腕にギュッと抱き着いた。 「や、出るっ!イく、イく……んんっ!」  そう言うと、伊織は素早くティッシュを手に取りそこを押える。相当濃ゆいやつでも出たのか、亀頭部からはどろりとした精液が溢れる感覚があった。  俺はぐったりと伊織の胸に背中を預けて、放心する。  ……すげぇ気持ち良かった……。なんか、何年かぶりに抜いたような、そんな解放感があるな。  実際にはそんな事ないのだが、あくまでも比喩というやつで、それ程までに気持ちが良かったのだ。  伊織はその間もテキパキと後処理を済ませて、俺のソコも丁寧にティッシュで拭ってくれた。それからパンツとズボンも履かせてくれて、至れり尽くせりで本当に頭が上がらない。 「い、伊織っ」 「ん?」 「お前は?その……抜かなくていいのか?なんなら俺がシてやるけど……」  同じ男だから分かる事。この状態での我慢は非常に辛いから、抜ける時に抜いておかなければスッキリしないというものだ。  しかし彼は布団の中に潜ってしまうと、俺を抱き締めて「んー、いい」と断るのだった。 「今は……こうしていたい気分だから」 「でもっ」 「大丈夫っすよ。慣れてるんで。それに……」 「?」 「晴弘さんには触れても、俺自身が触られるのとかは、まだ抵抗ある」  ……そんな断りを入れられても、抱き締められてるから当たるんですよ。  でも確かに、俺のを抜いてもらったは良いが、すぐにティッシュでキレイに拭かれてしまった。あんな手早くやるんじゃ余韻を楽しむなんて出来ないし、他の人からしてみれば冷めているようにも思える行動だ。  ……潔癖症って、案外面倒臭いのな。  俺はドキドキしながらも、抜かれた事による脱力感で、いつの間にか襲って来た睡魔にあっさりと意識を奪われて眠りに落ちていったのだった。
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