流星群が収束する地へ

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 この宴での決まりごと。メインコンテンツ。  流星群が頭上を流れる間はみな目をつむり、各々(おのおの)が祈りをささげるのだ。  独立自尊、商売繁盛、恋愛成就。  胸中に秘める願いはそれぞれが違うのだろうが、同じ空の下にその願いごとを打ち上げている。これが終われば祭りはお開きが近づき始め、空になった大皿を下げたりといった動きが散見され始める。  流星群の形は毎回変わる。天文的な理由から――と、教えられているが、詳しい解説は延べられない。その程度の学なのだ――東から飛んでくることだけは同じだが、この会場からは木々に阻まれて端にしか映らないこともあれば、やけに近くて、大迫力に空を駆けていくこともある。人々は今回の流星群はどうであったといつも感想を述べて、翌朝までその話題で盛り上がる。  今日は「当たり」の部類のようだ。星がレーザー光線のように空を切っては僕の視界を何重にも横切り、去っていったと思うとまた新しい星が視界の奥から一心不乱に過ぎ去っていく。雲一つない空にそれはとても神秘的な一枚に映り、僕の眼にカメラがついていないものかと何度も思った。  僕もそっと目を閉じて、少し離れた場所から、島の人たちと同じく心の内を空になげつけた。 ――いつか、この島から出ていけますように。
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