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Rainy Day
大好きな君と喧嘩した翌日は、朝からどしゃ降りの大雨だった。
テレビもネットも暗いニュースばっかりで、占いも最下位。
週間天気予報には、ズラリと並んだ傘マーク。
朝から頭も重いし、空を覆う分厚い雲もどんよりと重たい。
家を出て五分もしない内に、下ろしたてのスニーカーは、早くもずぶ濡れになった。
よく見たらビニール傘の骨も、一本折れている。
歪んだ傘に容赦なく降り注いでくる雨音が、昨夜電話越しに聞いた、君の泣き声を思い出させた。
──最悪だ。
天気も気分も、君を泣かせてしまった俺も。何もかも最悪だ。
生ぬるく湿気た空気の中へ、ため息をこぼす。
すると突然、暗い灰色の視界に、鮮やかな黄色が飛び込んできた。
子供用の、小さな傘だ。
母親と手を繋いで歩く少女が、得意げにくるりと回すそれは、ピカピカで真新しい。
雨の中で輝く、太陽みたいだ。
傘とお揃いの黄色い長靴を履いて、少女は浮き足だった様子で、俺の前を歩いている。
彼女はこの傘をさしたくて、雨の日を待ちわびていたんだろうか。
少女がふと、通り沿いの花壇を指さした。
雨に濡れて咲く、色とりどりのパンジー。
「お水、いっぱい飲めるね」と、母親と笑い合う無邪気な横顔。
モノクロのようだった世界が、あたたかい色に染まっていく。
憂鬱になっていた自分が、何だか無性に恥ずかしくなった。
どうして気づけなかったのだろう。
どんなときでも、輝くものは確かにあって、降り続く雨も、いつかはあがる。
どれだけ雨に打たれても、大好きな君への想いは、流れて消えることはない。
まずは君に「ごめん」と電話して、この週末は、新しい傘を一緒に買いに行こう。
泣かせてしまったお詫びに、君が好きなパンケーキの人気店に並んで、気になっていた映画を観よう。
明日も明後日も来週も、やまない雨が続いたって、優しい気持ちで居られるように。
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