鬼と人が暮らしていました

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<お兄がいなくなるまであと2日> しとしとと雨の降る日は、如何しても気分が乗らない。 家事のお手伝いをした後、ダラダラと横になりながら、お伽話の本を開いてみたけれど、何も頭に入ってこない。しとしとしとしと、陰鬱な雨の音で集中しようにもできる訳がない。しかも、部屋が薄暗いときたもんだ。目が悪くなる。 ああ、ほら、文字が私の目から逃げていく。 実際は私の集中力が皆無なせいなのだけれども、天気と文のせいにした私は、ぱたりと本を閉じて、隣で荷造りをしているお兄のところへちょっかいをかけに行った。 「お兄~」 からりと開いた(ふすま)の先で、お兄は真剣な顔をして本を選んでいた。大方、持っていく本を決められないのだろう。 お兄は本を読むのが大好きだ。どのくらい好きかといえば、小さなころに本の読みすぎでお母さんに本を隠されたくらい好きだ。
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