鬼と人が暮らしていました

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ごろりと畳に寝転がってもう一度、お兄を見習ってみようと思ったけれど、これも続かず。 いつもはお兄と一緒に出る家だけれど、今日は仕方なく一人で散歩に行こうと決めた。 裸足に下駄履きでこっそり家から抜け出す。 何で裸足かって? 足袋を濡らしたらお母さんに外に出かけたことがばれるじゃない。 いつもお兄と行く裏山とは反対側のあぜ道を散歩することにした。 家の中ではしとしと、そう聴こえた雨音も、雨傘に落ちればバタバタと。 その音が気に入った私は、まるで楽器の様に、くるくると傘を回しながら歩く。 水たまりを蹴る。跳ねた水が元の場所に戻る時、またぽちゃん、と音がする。 雨の日って、こんなに音がするのね。 今まで家に閉じこもっていたのが勿体なかった。もっと早く、一人で外に出ていれば良かった。 音を楽しみながら歩き続け、ふと気が付けば、山肌が見える場所にやって来ていた。
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