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人間は、皆、憎むべき存在であり、決して相容れない存在だと、鬼子たちはどんなに小さくても知っている。
如何どうしよう。
どくんどくん、心臓の鼓動が加速する。私の小さな脳みそは、無事にこの場を切り抜ける方法を精一杯探してフル回転している。
そんな私の状況を知る由もなく、彼は首を傾げて、私に尋ねる。
「……キミは、鬼子?」
「……ええ」
警戒しながら頷いて見せれば、その人間は、眉を下げてふわりと笑う。
「……綺麗な、色だね」
「え?」
「……その、髪」
つ、と伸ばされた褐色の腕に、びくりと強張る私の身体。ぎゅっと傘の柄を握りしめたのが見えたのだろう、伸ばされた腕が私に届くことはなかった。
「大丈夫、本当に何もしないから」
そして、「ほら」と言って、そのまま、途中で降ろした腕を胸の前で組んだ。
そんなことしたって、危害を加えないとは限らないんだから。
そこまで考えて、はた、と気が付く。
実はこの人間の方が、ここに居るの危険じゃない?
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