鬼と人が暮らしていました

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<お兄がいなくなるまであと1日> 翌日。 昨日の雨が嘘のように、からりと晴れあがった。 庭に出れば、太陽の光が燦々(さんさん)と私を照らす。 今日は、お兄と二人きり。両親は、町に出かけている。なんでも、お兄の戸籍を鬼の本部に渡さなくてはならないらしい。私たちの住む場所から、鬼ヶ島の中心部はわりと距離があるので、明日の朝まで二人は帰ってこない。いつもなら喜んでやりたいことをやる私だけれど、今はそれどころではなかった。 「……」 思った通り昨晩は良く眠れなかった。 ずっと頭の中では、昨日出逢った、人間の事を考えていた。 鬼子に逢ってみたかった? 話してみたかった? そんな人間が、この世に存在するなんて思ってもみなかった。人間は皆、野蛮で、偏屈で、傍若無人で、不細工だと思っていた。 ……不細工だと思っていた? 頭に浮かんだ言葉に、ぶんぶんと頭を振り回した。人間をキレイだと思うなんて、鬼子失格だ。
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