鬼と人が暮らしていました

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「……小梅? 如何したんだよ?」 お兄が不審げにこちらを見て声をかけてきた。やばい、お兄を心配させたらいけない。 「ううん、何でもない」 「昨日一人で抜け出したこと、父さんに怒られたから凹んでるのか? ごめんな、俺が付いていけばよかったんだよな」 思案気に私の顔を覗き込んでくるお兄に、空元気で笑って見せる。 とりあえず、歯でも見せとくか。 にぃっと笑って見せたけれど、余計変な顔をさせてしまった。失敗。 「おい、本当に大丈夫か?」 「いや、ちょっと、ね」 「小梅?」 「あー、そう言えば、昨日手拭い落としちゃったみたいなんだよねぇ、探してくるねぇ」 駄目だ、これ以上お兄と一緒にいるとぼろが出る。そう思った私は、下駄をつっかけて、家を飛び出した。 自然と足取りが早まる。 陽の光が昨日の雨粒を照らして、きらきらと光る草花。それを見ているから、心が浮足立ったことにした。 畑の横を通り過ぎて、歩く、歩く、歩く。 どのくらい歩いたのだろう。
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