53人が本棚に入れています
本棚に追加
「いたっ」
二日連続裸足に下駄。しかも昨日は、雨で濡れていたから、更に摩擦係数が大きくなっていたはず。流石に鼻緒が当たっている部分に痛みを感じたので、立ち止まって自分の足を見下ろした。
「あー」
思った通り、小さな傷が出来ていた。
僅かにじわりと滲む赤。何で手当てをしようかと思案している私に、影がかかる。
「やっぱり来たね、鬼子ちゃん」
その声に顔を上げれば、そこには、昨日と同じく漆黒を歪めてにやりと笑うアイツがいた。
髪は灰白、肌も何だか白っぽい。若干の違和感は否めないが、十分上手く鬼子に化けていた。
歩き続けてきた私は、自分でも気づかず昨日と同じ場所へと赴いていたらしい。アイツは、相も変わらず手ぶらだった。
「何、逢いに来てくれたの?」
「べ、別に、あんたに逢いに来たわけじゃ、」
「はーい、そう言う事にしといてあげる」
そう言いながら、鬼子もどきの人間は、おいで、と手招きをする。
「変なことしないでしょうね」
「しない、でも、」
「でも!?」
何をする気なの。
最初のコメントを投稿しよう!