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「足の手当てはするよ」
そう言って、小さな傷が出来た私の足を指さした。
「何だ」
「何だって……逆に何されると思ってたの」
「……別に!!」
私の反応に満足したのか、彼は、からからと笑いながら、私の隣を歩く。ひょこひょこと歩く私の速度に、この人間が自然と合わせてくれていることに気が付いたのは、洞窟の中に入ってからだった。
「……お邪魔します」
「はい、どーぞ」
4畳ほどの小さな洞窟。目が慣れるまで待って、ぐるりと見回せば、目についたのは衣服などが干してある竹を加工した竿と、背中に背負えるように紐のついている木箱。
洞窟の中は、太陽の光が遮られて、若干肌寒い場所だった。けれど、こじんまりとした焚火が焚いてあり、近くによれば、ほんのりと暖かかった。
焚火の近くに広げてある風呂敷の上に誘導された私は、そこに腰を下ろした。
入ってすぐに焚火に手を伸ばした私を見て、彼は申し訳なさそうに言う。
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