鬼と人が暮らしていました

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「ごめんねぇ、寒いよね。もっと太陽の光が入って来るような洞窟を見つけられたら良かったんだけど」 私に座るように促しておいて、彼は木箱の方に向かう。そして、木箱の留め金に手を掛けた。 カチャっという音がして、木箱が開く。思わず、声が出た。 「……すごい」 1つの留め金を開いただけで、まるでからくり箱の様に、様々な場所から棚が飛び出す。 「だよねぇ、僕もすごいと思う。よくこんなの作れるよねぇ」 呑気にそう言いながら、彼は、木箱の中のいくつかの小さな棚を真剣な瞳で吟味し、1つずつ白い包みを取り出していく。仄暗い洞窟の中で、何故かその白さが目に痛かった。 「貴方、お医者様なの……?」 「いや? ただ、ちょっと薬に詳しいだけ」 目当ての包みを見つけて満足げに頷いた彼は、そう言いながら、その辺に干してあった手拭いをビッと音を立てて破いた。 驚いて見ていれば、小さくなったほうの切れ端を水で濡らし、白い包みを開いて粉を染み込ませる。それを私の傷口にのせ、大きなほうの手拭いの切れ端を私の足に器用に巻き付ける。
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