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のらりくらりとした雰囲気からは到底想像が出来ない眼光に、ひゅっと息を呑んだ。
飲み込まれてしまいそうな漆黒を、これ以上見つめることが出来ないと本能が感じて、思わずぎゅっと目を瞑る。次に開いた時には、先ほどまでの強い眼光は、何処かに消え去っていた。
「はい、終わり。ちょっと待って、今お茶入れるから」
まるで友達を家に招いたときの様に私のことをもてなしてくれる彼に、12歳の私は純粋に興味を持った。
差し出されたあたたかい飲み物を、恐る恐る口に含む。ふわりと薫る緑の香り。これが人間の飲み物。
「美味しい……」
「美味しいよね、僕、緑茶が一番好きなんだよね」
そう言って彼も同じようにそのお茶を口に含む。唇に零れた雫を、ぺろりと舌が掬う。
その様子に、また私の頬が熱を持つ。
いちいち色っぽい。……これが大人の色気ってやつ?
「……あなた、何歳なの」
「僕? 17歳」
「嘘」
お兄と同い年じゃない。
お兄はこんなに、……こんなじゃないわ。
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