鬼と人が暮らしていました

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帰り道に、思う。 桃も十分馬鹿だけど、きっと私も同じくらい阿呆だ。 桃に借りた羽織からは、嗅いだ事の無い薬の香りがしたけれど、そんな事がどうでも良くなってしまうくらいに、私は浮かれていた。 歩いて帰る間に真っ暗になってしまったから、家の灯りが見えた時には若干ほっとした。 からりと家の扉を開く。 「ただいま」 「小梅! また勝手に抜け出し、」 私の声に、廊下から顔を出したお兄の顔色が、瞬時に変わった。 「お前、この羽織、何処で」 「え?」 お兄が手を伸ばして、桃に借りた羽織を掴む。奪い取られた萌黄色は、直ぐにお兄の手によって引き裂かれた。 「お兄! 何するの!」 「うるさい、黙れ!」 取り返そうとして腕を伸ばすも、今まで見たことのないお兄の剣幕に、びくりと身体が震えた。行先のなくなった私の指は、ただ空中に停止していた。
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