鬼と人が暮らしていました

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「これを何処で手に入れた?」 じっと私を睨みつけるお兄は、いつものお兄ではなかった。優しい光を湛える琥珀色の瞳は、段々と紅色に変化していた。驚きで声も出せずにいれば、お兄は、ぱちりとひとつ瞬きをする。次に瞼を上げた時には、虹彩は全て紅色になっていた。 「お兄、目が、」 「……俺は、明後日から鬼になるんだぞ、紅色に出来なくてどうする」 そう吐き捨てたお兄は、ビリビリに破いた萌黄色を、廊下にたたきつける。 「俺の目は、人間に反応する、鬼の瞳だ。俺の鼻は、人間の血の匂いがわかる、鬼の鼻だ」 その姿に、その声の強さに、私は動くことが出来なかった。 「……案内しろ」 吐き捨てられた言葉に、ジワリと、視界が滲む。ツンと鼻が痛くなる。 「……嫌だ」 「小梅」 「嫌だったら嫌だ!!」 叫んだ瞬間、ぼろりと、大粒の涙が頬を伝った。私が吐き出した感情は、ぎゅっと握られた拳の上に、ぱたりと音を立てて落下した。
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