鬼と人が暮らしていました

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そんな私を見つめる漆黒に、気が付かないふりをした。目を合わせたら、お別れがやってくる、そんな事など、とうに分かっていた。 だから私は、出来るだけゆっくりお米を噛み締めた。けれど、終わりはいつか訪れるもので。 空っぽになったお茶碗を見つめて頑なに顔を上げようとしない私に、優しい桃の声がかかる。 「小梅、帰りな」 「で、でも、……桃は如何するの」 お兄に合わす顔がなく帰る場所がない、 もとい、帰りたくない私は、桃に言い募る。 けれど、桃は、笑顔で言葉を落とす。 「いいから。僕は大丈夫だから。どうせこの島にいるのも、今日までだったし、本土に戻ったらちゃんと治療するから。あと、菫くんは今日家を出るんだろう? ちゃんとお見送りしないと」 ああ、きっとこれは、世界一やさしい、拒絶。 そんな風に言われてしまったら、帰るという手段しか、私には残されていない。 もう二度と、桃には会うことはないのだろうなと、そう思う。じわりと滲んできた視界を誤魔化すように口角を上げた。にっこり笑って、桃の要求に頷いた。
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