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「今も、」
声が震える。ぐっと喉に力を入れる。
「ん?」
「今も、……その願いは、変わってないのか」
「変わらないよ」
間髪入れずに聴こえて来たその柔らかな声に、ジワリ、と心が震える。
その尊さが、直接心臓に刺さって、思わず胸を押さえる。
「だって、鬼子も人間も、何も変わらないよね」
まるで時を遡ったかのような、その台詞。
それは、あの日、17歳の桃が12歳の私に言った、その言葉。
私の胸に、希望を灯して、そして、
残酷にも全てを奪っていった、その音。
“キミが、殺しに来るのを、待ってる”
桃との、約束。
それを果たす為に、ここまで来た。
だけど、その約束よりも、私はもっと、ずっと大きなものを、貰ったんだ。
「……そう、だよな」
12歳の鬼子である私は、17歳の人間である桃の事を、美しいと思った。
今の私は、――……それを、信じたい。
例え再び裏切られようとも、私は、後悔しない。もう二度と、桃の所為になんてしたくはない。信じる事を、自分で決めて、自分で選んだのだから。
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