如何して憎み合っているのか、知りませんでした

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名前を呼ばれるだけで、身体がビクンと震えた。臆病すぎる自分に、唇をぎゅっと噛み締めた。数秒前の自分の言葉を後悔し始めた、時。 「……こっち、向いて」 その声に、俯いていた顔を、そっと上げた。 刹那、漆黒に囚われた。 火花が、散った。 は、と感情を融かした吐息が零れて、 ――……そのまま、桃に飲み込まれた。 唇が、重なった。 そう気が付いたのは、柔らかな熱が、私の涙に濡れた唇を包み込んでからだった。 「……、」 何度も、何度も、角度を変えて重なる唇。 小さな水音が、部屋に響く。 壊れそうに脈打つ心臓。 震える吐息に、優しい熱。 耐え切れなくて、ぎゅう、と桃の着物を握り締めた。 「――……」 刹那、桃の両の手のひらが、私の頬にそっと触れる。その指は、柔らかく、顎を支える。 その間も、私を包み込む唇は、やっぱり、何処までも優しくて。 「――……っ」 桃のくれる優しさに、涙が、止まらない。頬を伝って、ぱた、と落下していく。私に添えらえている桃の指先を濡らす。
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