如何して憎み合っているのか、知りませんでした

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腕が、捕まった。そのまま上に昇って来た桃の指が、私の指に絡まる。酷く瑞々しい感触に、どくり、と心臓が大きく鳴る。そっと、顔を押さえていた手が外される。 「俺は、どれだけ待ったら、いいの?」 「っ」 「もう――……待てないよ」 桃の漆黒が、私の目の前に在った。 「……っ、こっちの、台詞だ――……馬鹿」 8年前と8カ月ぶりに、私達は、こつん、と額を合わせる。私の髪と、桃の髪が、重なって混ざり合う。 偽物の、漆黒の瞳。紛い物の、漆黒の髪。全部を偽っている、私だけど。 だけど、――……桃を想う気持ちは、本物だから。 だから、――ああ、神様。 こんな私を、許してくれますか? 「桃と、一緒に――……生きたい」 私のその言葉に、桃の漆黒が弛んで、目じりから一粒だけ、感情の雫が零れた。 それ以上の言葉は、私達には、要らなかった。 顔を見合わせて笑って、そして、同じように、涙を落とす。 「――……」 自然と唇が重なった。 二度目のくちづけは、柔らかくて、優しくて、 ――……そして、涙の、味がした。
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