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桃と一緒に生きていく事を決めた次の日。
何処かふわふわとした気持ちで私が広間に行けば、いつも通りに桃は「おはよう」と瞳を弛めて笑った。
「……おはよ、桃」
「よく眠れた?」
そう言って朝ご飯の用意を続ける桃の背中に、きゅう、と胸に愛しさが満ちる。
無性に抱き着きたくなって、そう思った自分に驚いて、ごほん、と咳払いをした。
「……桜ちゃん?」
「あ、ごめん、凛」
呆けていた私の後ろには、これまた起きて来たばかりの凜が居た。
「如何したの?」
そう言いながらも、すたすたと私の横を通り過ぎて、くぁ、と欠伸をしながら席に着いた凜に、何だか拍子抜けする。いや、凜は知っているはずもないので、当たり前なのだけれど。
ふわふわしてるのは私だけの様で、何だか少し、面白くなかった。
桃は昨日、一緒に生きて欲しい、と言った。
一緒に生きるとは、どういう事なのか。
結婚するという事? それとも、
そんな事を考えていたら、知らず知らずのうちに無口になってしまっていたらしい。
「桜?」
「……いや、何でもない」
何となくむくれてしまいそうになる自分を抑えながら席に着いた。目の前には、桃の用意してくれた朝ご飯。
味噌汁に、ご飯に、――……卵焼き。
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