鬼と人が暮らしていました

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「うん、待ってるよ、蘭、向日葵。二人なら絶対に入ってこれるよ」 真面目な蘭と向日葵に、にっこりと笑って答えるお兄。お兄がとられた気がして、何だか面白くない私は、ぼそっと文句を言う。 「余所行き笑顔」 いつもなら暴言が返って来るのに、今日に限っては蘭も尊敬するお兄の前で緊張しているようで、何も言わない。そんな私たちを見て、くすっと笑ったお兄は、突然の爆弾発言をする。 「小梅は蘭が好きなんだよなぁ」 「は!?」 羞恥でぼっと顔が真っ赤に染まったような気がした。慌てて首を真横に千切れるくらいに振る。視界の端で蘭を見れば、その色は、何故だか蘭にも伝染したようで、真っ赤になって目を見開いていた。 「悪かったなぁ、俺が蘭とっちゃって」 「ちちちち違う!! お兄がとられた気がしたんだってば!!」 「またまた、真っ赤なくせに」 「ちがーう!!」 笑い声が、庭に弾ける。 和やかな、優しい時間だった。
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