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1ページ目、白紙
『今まで大好きだったよ。ありがとう』
言い訳をするように、文字をそっとなぞる。
便箋もインクも、にじんでしまって、紙が破けそうだ。
「ずっと…ずっと一緒だっ、て……お爺さんお婆さんになってもっ、ずっと、ずっと……って!!」
生まれた時から15年間。ずっと一緒に育ってきた。
アルバムも、フォルダーも、必ず一緒に、映ってきたのに。
淡いこの想いを、あなたに打ち明けようと思い始めたばかりなのに。
なのに、あなたはっ……
「いじわるっ!……一緒って、ずっと一緒って」
「……言ったじゃない……」
便箋は、涙と皴で、ぐちゃぐちゃになっていた。
私はそっと抱きしめて、あなたを呼ぶ。
「キサくん」
『アーリスッ!』 『アリス!!』 『アリスちゃん』 『スーちゃん』
何度も、何度も、彼の声を思い出す。
優しい顔、怒った顔、真剣な顔、悔しそうな顔…
いろんな顔も、たくさん見てきたけれど。
私の名を呼ぶあなたは、何時だって。
『アリス、はなれてても、ずっと一緒、だろ?』
明るくて、太陽みたいな、まぶしい笑顔だったね。
私はもう一度、つぶやく。
あなたに、届くように!
「私も、わたしも、大好きだよ! ずっと、ずーっと!」
宙に手を伸ばして、 この声が、届くように。
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