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お家はどこですか
「君、迷子なの?」
どこぞの童謡の歌詞。
まさに、あのままといった感じの状態が、今、目の前で起こっている。
(参ったなぁ~ 一応交番勤務ではあるけど、何も答えてくれないんじゃ…)
その子は、大きなテディベアの縫いぐるみを抱きしめて、俯いたまま何も話さない。
縫いぐるみの毛がペタッと寝てしまっているところや、
鼻のあたりが少し汚れているところから、
随分前からずっと持っていたものだろうと思われる。
(もしかしたら、俺がデカすぎるのか・・・?)
恐らく小学校低学年くらいだろうが、同年代と比べても一段と背が低いであろうその子。
一応かがんではいるものの、その子との距離はなかなか縮まらない。
(…しゃがむか)
ついていた手を外して、膝を曲げる。
その子は、突然視界から消えた俺に、驚いていた。
やっとその子の肩くらいの位置にきた俺の頭に、何かがそっと触れる。
テディベアか・・・にしては、暖かい。
何だろう。 小さくて、とても暖かな…
ふと顔をあげると、女の子がこちらに手を伸ばしていた。
ただ、黙って、俺の頭をなでていた。
突然、何かがこみあげてきた。
熱くて、ツンとする、儚いもの。
彼女に知られたくなくて、俯いた。
「頑張ったね」
優しい声が、聞こえた気がした。
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