Bring your notebook

1/1
前へ
/32ページ
次へ

Bring your notebook

「吉原ぁ――――――!!」 「ゲッ、鬼さんが来たぞ」 「まぁた、吉原さんだ」 「今度は何点だったんだろ?」 「理数は得意なくせに、社会系全般苦手らしいぜ」 鬼さん。 日本史の鬼山(きやま)先生。 基本的には優しいのだけれど、私には厳しい。 私だって、最初の方は優しく教えられていたのだ。 ただ、覚えられないだけで。 (ま、嫌いじゃないけどね…) 今日は、先生に頼まれていた用事をドタキャンさせていただいた。 まぁ、1週間に1回、しかも水曜日に決まっていなくなるから、もうほっといてもいいだろうに… 「で?卒業の日になっていきなりテストやりたいとか、どうしたんだ?」 「気が向いただけで―す」 先生は納得いかなそうな顔をしていたけれど、何も言わずにノートを渡してくれた。 「20分間な。 名前、書いたか?」 (ふぅ・・・・・・) 「…はい」 「……3、2、1.始め!」 先生は、腕時計を見つめて、合図を出した。 コトッ 鉛筆を置く。 (終わっ・・・た…) 最後に書いた文字をゆっくりと見つめる。 最後に、伝わるといいな。 先生、 ありがとう。 「では、ノートを前に。」 この先に待っているであろう未来は、  のちに一つの歴史として、 語り継がれていくだろう。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加