9人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
rainy memory
「ねえ、覚えてますか?」
三年前のあの日。
あの、うだるような、暑くまぶしい日。
じっとりとした雨の日は、あれほど鬱陶しく思っていたのに。
覚えていますか?
私があなたに恋をしていたこと。
雨の日だけしか 現れないから。
私、雨が大好きになっちゃったみたい。
雨にすける絹のようなブロンド。
高くきれいな鼻筋。
バス停にぶつかるほど高い背。
そして。
会う度に歌ってくれた ラブ・ソング。
クイーンズイングリッシュが、私の耳をくすぐって。
そのたびに、あなたを、好きになった。
『傘も差さないで、寒くないの?』 なんて、可愛くないことを言うと、
『だって、オレがいなかったら、イチは合格できないでしょ?』
なんて、おどけたように笑ってたね。
でも、今だったら言えるよ。
「あなたが、また、出てこなくてすむくらい、英語 上手になったん…だから、ね?」
ちょっと涙混じりに言ってみる。
あ~あ。 素直になるって、決めたのに。
「I love you, very much 」
最初のコメントを投稿しよう!