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宝石とかけまして涙と説きます。
「お客様、こちら、買い取らせていただいても?」
「えっ!さっきは偽物だって…」
「確かに、本物ではありませんが、私にとっては魅力的に映ったので。」
「は、はぁ・・・」
「あ、個人的に、です。 売ったりはしませんよ。」
キラキラと光る。 偽りの輝き。
それでも美しく思えてしまうのは、きっと、あの人に似ているからだ。
――――――
『ねぇ、本当に泣いていると思ったの?』
頬を濡らして笑う。
電話をしてきたのはそっちだっていうのに、嘘の電話だったのか?
(あぁ、そうか。そういう人だった)
この人は、甘え方を知らないんだ。
自分を誤魔化したり、他人を誤魔化したりするしか、知らないから。
(寂しいって、言えよ)
――――――
きっと、あの人が電話をしてきたのは、
俺に話を聞いてほしかったからじゃない。
信じてほしかったんだ。
その涙も。 この宝石も。
美しい。
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