泣キ虫 クランベリー

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泣キ虫 クランベリー

「一年間、ありがとうございました…っ!」 ソウちゃんが、行っちゃう…っ!! (ダメ!まだ、まだ伝えてないことがあるの!) 1年かけてやっと出ていったはずの「泣キ虫」が、また……戻ってきちゃったみたい。 「お、おい!泣くなって。 今生の別れじゃないんだし、な?また、どっかで会えるって。」 ポン、ポン。 優しく頭をなでられて、また涙があふれる。 1年前から、私が恋をしたソウちゃんは、いつも優しかったよね。 辛くて、苦しくて、泣いていた私を。励ましてくれた。 私は、何も知らない、赤の他人同然だと思ってたのに…… もう 10年近く前のこと覚えてるとかっ、 でも、そうだったね。10年前も、1年前も、今も。 チラッと、ソウちゃんのスーツを見ると、胸ポケットに1輪の花がささっていた。 「クラン……ベリー」 「ん?どうした?」 私が落ち込んだ時、悲しいとき、辛いとき。 ソウちゃんと一緒に食べた、クランベリーの味を思い出す。 甘くて、すっぱい、ちょっと大人の味。 私も、ちょっとは大人になれてる、かな? ソウちゃん、私、来年も、再来年も、実が付くように、みてるから。ね? 「ソウちゃん先生、ありがとうございました!」 最っ高の笑顔で! とびっきりの、スマイルで!! 「泣キ虫は、もう……いませんよ!」
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