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あずまやのベンチに座り、何十回めかのため息をついた。
公園へ入ってから降りだした雨は、止むどころかますます強くなっている。
水煙で白くかすんだ景色は、緑を濃くするばかりで、誰も通らない。
「冷た……」
雨垂れが跳ねた顔をこすれば、まぶたはまだ腫れて熱をもっていた。
疲れた。
体が冷えてきた気もする。
でも、何も持たずに出てきたから、どこにも行けない。
「どうしようかな……」
途切れない雨音を聞いていると、一人きり、閉じ込められた気分になってきた。
みじめさも悲しさも、少しずつ流れていくのに、重い気持ちだけが残る。
ひどい事を言ってしまった。
けんかの勢いだけで飛び出して。
後悔と、大好きな人の背けられた顔を思い出して、またため息が出る。
どんな顔で帰ればいいのか分からない。
傘も無いから帰れないけど。
このまま、雨がずっと止まなければいいのに。
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