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「つーかお前ら何でケンカしたの」
「……浮気、疑惑」
「は?女とチューでもしてたかよ」
「……うん。きのう、飲んで、1人酔いつぶれたから抱いて帰ったって聞いて。問い詰めたらあんまりごまかそうとするから、それならこっちも浮気してやるって。どんな気持ちか思い知れって」
言ってしまった。
そうしたら、顔を背けて何も言わなくなったから、部屋を飛び出したんだ。
「……きのう?」
ぽつんと言って急に立ち止まるから、背中にぶつかった。
「? きのうの夜の、飲み会の話だけど」
「そりゃ俺だ!」
「え?」
調子に乗って飲み過ぎたらしい。
それで、送ってもらったと。
そういえば、やんちゃそうな見た目の割にあんまり飲めない。
あの会に女子なんか居ないとか肩借りただけだとか言うのを聞き流して、信じられないもののように見つめる。
「……お持ち帰りされたの?」
「テイクアウトされてたまるかバカ!」
なんだ。違うのか。
「バカバカ言うなし。それなら別にいいかなって思ったのに」
「何がどのように?!」
「ついに友情が一線を」
「越えるか! ああもう言ってやる!あいつが!お前に妬かせようとして!俺を使って要らん事言ったんだよ面倒くせぇ!」
「……ふぅん?」
「1ミリも信じて無い目で見るなあぁ!」
そんな叫んで頭を抱えたら雨が全部かかるじゃないか。
傘を奪って、1人首を傾げてみる。
妬かせるために。
うぅん。マンネリ?
あんまりデレるのはちょっと控えればいいのかな。
足元でしゃがみこんでぶつぶつ言っているいきものとの仲がこんななので、時々妬かれているとは、全く気付いてないわたし。
「そろそろ帰るけど、まだやる?」
「お前のせいだ。あいつに全部自分で言わせて怒られてもらう予定だったのに……」
「大丈夫。それは後でやる」
「やるのかよ」
でもそうなると、さっきとは違った意味でどうしよう。
「あ。浮気……あてつけに、あんたに走るって言っちゃった」
「お前ら2人して俺を巻き込むなあぁ!」
絶叫はたぶん、まだ止まない雨の音にかきけされた。
了
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