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『なあ、そっちの台もうちょいで天井じゃね?』
ユキはたしかそんな感じで話しかけてきた。
お互いに顔は知ってた。ほとんど毎日来てるから。
んで俺は答えた。
『天井までに金がなくなるのが先だな』
こういうのは運だ。そんでもって俺はいつもついてない。財布の中にはすでにレシートと飲み屋の名刺くらいしかない。
『じゃあこうしよう』
と、ユキはこんな提案をした。
『この台、協力して大当たり出そう。んでそれを元手に、こっちの台も大当たり出そう。そんで今日はハッピーに帰ろう、な?お互いに!!』
んでな、俺もアホだからさ、ノったんだ、その提案に。だって人間助け合いが大事だって死んだ父親が言ってたから。
が……、帰り焼肉食って帰ろうぜとか言ってたのがウソみたいに、二人とも財布がすっからかんになった。
右の台で出た玉が、見事に左の台に吸い込まれた。信じらんねぇよクソが。
その後なんか仲良くなって、お互いの傷を舐め合いながら俺んちで宅飲みして、なんか流れでヤッて今。みたいな。
正直顔がタイプだったからいい。アレもデカかったし直良し。
が、ひとつデケェ問題があった。
ユキはただのパチンカスじゃなくて、マジで家無しのクソニートだった。そのクセなんやかんや家事ができるんだから、追い出そうにも追い出せなくなった。
そんな感じで、俺らの変な同居生活は始まった。
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