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第1章
「うわ朝練、遅刻だ」
電車をかけ降りて改札に急いだ。
駅ホームの時計は午前6時55分。
今朝の男子バスケ部の自主練は午前7時からだった。
(7時集合とか早すぎ)
まばらな人波をすり抜け一番に駅を出ると、駅前から学校に向かう一本道が目の前に明るく広がっている。
桜並木で有名なこの道沿いの桜も今は緑が目立ち、浮き足立った学校の雰囲気も少しづつ落ち着きを取り戻してきたというのに、悠は相変わらずだった。
この道は悠たちの高校では『遅刻坂』と呼ばれている。
午前も終わりを迎える時間帯に、
『おはよう』『バイバイ』という挨拶が交差する道だ。
でも登校の時間にはまだ早く、生徒の姿はなかった。
体育館に着いたらもうウオーミングアップは終わっているだろう。
悠は途中から仲間に合流しても支障がないよつに、軽く走って学校に向かった。
すると、目の前に制服姿の女子がひとり、歩いているのが見えた。
(誰だろう)
華奢な後ろ姿、すらりと伸びた脚、肩下の長さの髪がさらさらと揺れていた。
(新見さんだ)
悠は後ろ姿で彼女だと確信した。
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