22人が本棚に入れています
本棚に追加
ひと眠りのはずがふた眠りしたらしく、私は乗り越してしまった……。
慌てて新幹線を降り、駅で乗り越し料金を払った。予定外の出費に泣いた。
ここは何処だ? どうすれば保養所に行けるのだろう。もう遅い時間なので電車も無くなって引き返す訳にもいかなかった。
仕方が無いので駅前でタクシーを拾った。保養所の住所を伝えると運転手さんは喜んで車を発車させた。きっとかなり料金が掛かるのだろう。そう思うとまた泣けてきた。
「お客さん、もしかして乗り越したんですか?」
「はい……」
「各駅停車の電車だったら良かったのにねぇ。新幹線乗り越したら、結構遠くまで行っちゃいますよねぇ」
傷口に塩を塗りつける運転手だ。寝たフリでもしようかと思ったが、また寝過ごしては泊まるところが無くなってしまう。頑張って起きていなければ。
「もう夜で見えませんが、右の方に大きな山があるんですよ。時々噴煙も上げてる活火山でね。それでここら辺は温泉が出るんですよ。美人の湯って言われてるんです。ゆっくり入っていって下さいね」
夜なので周りの風景は全く見えなかったが、運転手さんは色々説明してくれた。そのお陰で寝ること無く乗っていられた。
「着きましたよ」
最初のコメントを投稿しよう!