ハッピー・バケーション

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 いつの間にか人里離れた山奥へ来ていた。ここなら静かに過ごせそうだ。 「ありがとうございました。おいくらですか?」  金額を聞いてまた泣いた。深夜料金もプラスされ、結構な金額だった。保養所は低料金で泊まれる。それだけが救いだった。  タクシーを降り保養所へ入った。思っていたのとは違い、年季の入った純和風旅館だった。 「遅くなってすみません。予約しておいた吉田ですが」  すぐに奥から着物姿の女性が現れた。 「ようこそおいでくださいました。お疲れでしょう」  女性は若いとは言えないが、すらっと背が高くほっそりとしていてスタイルが良かった。何より肌も髪もツヤツヤで潤いに満ちていた。 「女将さんも会社の化粧品使ってるんですか?」 「は? 私は化粧品なんて使っていませんよ」 「え! だって凄く肌も髪もお綺麗です」 「ああ、それは温泉のお陰です。何十年も毎日温泉に入っていますからね。それに食べ物も新鮮な物を頂いているからかしら。さあ、お部屋はこちらですよ」  通された部屋は和風で少し昭和の匂いのする、落ち着いた部屋だった。 「すぐにお料理お持ちしますね」  女将が出ていって、私はすぐに畳の上に大の字に寝転がった。い草の香りに癒やされ、とても心地良い。
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