ハッピー・バケーション

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「う〜、極楽極楽〜」  気持ち良いと声が出てしまうのは自然現象、誰も止められない。 「本当に気持ちの良い温泉ですねぇ」 「!!」  先客がいた事に気付かなかった。めちゃくちゃ恥ずかしい。  女性は猿顔のおばあさんだった。しかしその肌はつやつやだった。 「この温泉のお陰で元気に働けているんですよ」 「そうなんですか」  肌艶はいいが結構年がいってそうだ。それなのにまだ働いてるとは恐れ入った。 「お嬢さんもゆっくり入って行ってね。ああ、ここの温泉は飲んでも効くのよ」 「そうなんですか?」 「体の中から健康になれるわよ」 「なるほど〜」  おばあさんに言われお湯の出口から温泉を手のひらで受け、少し飲んでみた。硫黄の香りが気になるが、不味くも美味しくも無い。 「そう、そのくらいずつ、少しずつ飲んでね。あんまり飲むとお腹こわすから」  そう言っておばあさんも温泉をひとくち飲んだ。  程よく温まり眠気の波が寄せてきた。おばあさんに挨拶をして部屋へ戻った。電気もついていない真っ暗な部屋に、窓から月明かりがぼんやりと差し込んでいた。  気持ちの良い布団に潜り込み、久し振りに安心して眠りに付いた。
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