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最近景気が悪くて人々の心が疲れきっているから・・・
「ポツポツポツ、ザーザーザー」
5分前までポツポツと降っていた雨が本格的な土砂降りになってきた。天気予報で言うバケツをひっくり返すような大雨というやつだ。
俺は天気観測所の窓から外の様子を見た。
「あーあ本格的に降り出してきたー。これで3日連続の雨か・・・帰るまでに景気予報の条件を変えておかないといけないな」俺は缶コーヒーを飲みながら発生条件率について考えていた。
天気観測所と有名な経済エコノミストが共同開発したものが「景気予報」だ。科学の進歩により、人々の感情や景気の善し悪しなどを判定し結果によって天気を変えることが可能になった。人々が「景気」が悪いと感じたり「今日は嫌なことが多かったな。」とマイナスの感情が多いと天気は悪くなる。今がまさにその状態だ。反対に全体的に景気が良い状態やボーナス日が近いなどプラスの感情が多いと天気は晴れの日が多くなる。
3日連続の雨・・・これはもうそろそろ発生条件率を考えるべきかもしれない。景気は良くなる傾向は見られないと経済エコノミストは皆、口を揃えて言っているし株価も不安定な日が続いている。発生条件率は10%づつ調整することが可能だ。現時点で高めの90%の表示が出ている。多くの人がなんだかの負の感情を抱えているということだ。
やれやれ、この先どうなるやら・・・さてと、職業を絞って抽出してみるとしようか。景気予報は業種や職種の割合を変えることが出来る。俺は50%まで下げて、金融系を多めの設定にしてみた。結果何も変わらなかった。雨は相変わらずバケツをひっくり返すような大雨だ。今度は俺は製薬会社を高めにしてみた。数年前まで謎のウイルスが日本中に蔓延していたから少しは潤っているかもしれない。俺はそんな淡い期待を抱き設定を変えた。しかし、またしても何も変わらない。
俺はその後も色々設定を変えてみたが雨は止む気配はない。
その時、男性の同僚の一人が声をかけてきた。
「どう?天気は変わりそう?」
「いやダメそう。何回も発生条件率を変えているのだが何も変わらないな・・・」
「そうか。やっぱり難しいか。いっそ景気予報をやめて自然の天気にしてみるか?」
「そうしてみるか。」
俺は同僚の言ってみたように景気予報の機械をオフにした。
しかし、天気は一向に変わらないバケツをひっくり返すような雨ではなくパラパラと傘がいらないくらいの雨になっただけだ。
どうして雨が降り続いているんだ?
俺はとても不思議だった。
その時、3Dテレビから景気予報ではなく、天気予報が流れてきた。「6月20日の天気予報です。今日も雨ででジメジメとした天気になりそうです。また、今年の梅雨明けは例年より少し遅くなりそうです。折りたたみ傘を持ち歩いたほうが良いでしょう。」
俺は今が6月で梅雨の真っ只中ということをすっかり忘れていた。
「そうだ、今は梅雨だ。雨が降って当然だ。」俺は突然、笑いがこみ上げてきた。
今は雨が降り止む気配がないが、いつかは梅雨明けするだろう。そうすれば、景気予報も良くなるだろう。まあ、景気予報は始まったばかりだしこういうこともあるだろう。まあ、気長にやろう。俺はそんな事を考えながら新しい缶コーヒーを開けた。
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