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九〇年代4コマ漫画の雰囲気で、雨
本日午後三時、私はどうしても出掛けなくてはならなかったのです。
その湿度は高く、雷もゴロゴロしておりましたので天気予報よろしくスコールのように雨が降るであろうことは私の全身の毛穴という毛穴からも明白でありました。
しかし、私はどうしても出掛けなくてはならないのです。
幸いにも雷がゴロゴロしているだけで、お空はほんのりと灰の色をしておるだけだったのです。
これは千載一遇のチャンスであると、誰にでもあるものではないと、そう私は思ったのでございます。
勇み立つ私は思い切って、お外にピョンと出たのでございます。土の中はたいへん暑いのです。
先にお出掛けになられた先人には本当に頭が下がります。ただ、タイミングが悪かった。
私は先輩たちを何人も何人も引き止めたのです。時期が悪い、タイミングが命であると。
しかし、彼らの気持ちは痛いほどにわかるのです。なにせ、土の中は暑すぎる。私も我慢しておったのです。
待って、待って……そして今なのですよ。
先人方、先輩方の記録を今こそ私は塗り替え、超えるのです!!!
「あぁ、降ってきちゃったよぉ。まぁ、降るとは思ってたけどね」
学校からの帰り道、アケミはひとり、持っていた青い傘をひらく。
「やだぁ、ちょっと復活してるじゃない」
公園前の芝生からは最近、土の中が暑すぎるのかミミズがよく飛び出し、そしてアスファルトの上で跳ね、のたくり、最後は黒く焦げたようになって息絶えていた。
それが急に降り出した雨により、ちょっぴりみずみずしさを取り戻している。
「……あらぁ」
そのみずみずしさを取り戻した亡骸のすぐ横に、まだまだ元気といわんばかりに跳ねているものがあった。
「よく見ればすごい光景よね。あなたも今のうちに土に帰らないと、またすぐにお日様が出てきちゃうわよ」
アケミはフンと鼻で笑い去っていった。
お嬢さん、それは私にもわかっているのですよ。
お空が灰の色のうちに出、雨を経て、そして日に照らされるのです。土には帰りません、暑いので。
ただ私は先人たちのようにすぐに日に照らされるのではなく、こうして記録を伸ばし、少しの天国を長く味わうのです。
そしてこの背中を後人に見せ、うっ、あっ、お天道様だ……!! あぁぁあ!!
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