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あれからどれ程の星を巡っただろう。
ある星の最期を見届けた私達は、次の星へと向かっていた。
「少し休憩しようか。」
私は傍らにいる少年に言った。
彼は私の中にある『宙力』の一部だった。
以前起きた人間達との争いによってこぼれ落ち、自我を持ってしまった。
あれから数年、私はこの少年と共に宇宙を駆け、様々な星を見守っている。
少し薄暗い星へ降りると ーーー
「―――雨だ…。」
少年の声が静かに響く。
何もない星に雨だけが降っている。
どうやら崩壊は免れたが生物は全て滅びてしまったようだ。
激しくはなく、しとしとと静かに降る雨が悲しげに映る。
少年は空を見ながら私に訊ねた。
「ーーー滅びた星はみんなこうなるの?」
「ーーー星によるかな。大雨が降ったあとカラカラに枯れる星もあれば、雨が雪に変わって凍りつく星もある。星の心次第かな。星にも意志があるからね。」
私はそうゆっくりと応えた。
「この星はどうなるの?」
「さぁ…。」
「ずっと止まないのかな…。」
「この星の気がすむまではね。」
すると少年は地の果てを見ながら訊ねた。
「僕の声、聞こえてるなら、お話、してくれるかな?」
意外だった。少年がそう願うとは。
「きっとさ、聞いてほしいと思うんだ。」
少し考えて、私は彼に伝えた。
「この星もまた、多くの傷を負っている。お前が思うほど、優しい話では無いだろう。ーーーそれでもか?」
「ーーー全部は無理かもしれない。代わりに背負うことも出来ないけど、少しなら、僕も一緒に悲しめると思う。」
その真っ直ぐな答えに、私は微笑んだ。
少年の頭を撫で、同じように広い荒野の果てを見る。
「ーーー聞こえたか?お前の話、私達に聞かせてくれないか?」
そしてその星の名を呼んだ。
「ーーー地球。」
(ーーーーーーーーーーーーー)
ーーーどれ程時間が経っただろう。
悲しい雨はまだ止まない。
けれど優しく降っている。
すると…
「見て!!」
少年が声をあげた。
空を覆っていた雲が晴れた。
射し込んだ太陽の光が降り続く雨を輝かせる。
『―――君のおかげで少し元気になったよ。…ありがとう。』
地球は穏やかに伝えた。
『もうすぐ私と言うこの星も、星と言う形で無くなる。その時は私も君達の行く先へ連れていってくれるかい?』
「うん!勿論!!」
「お前がそう望むのなら。」
星自身がそれを願うのは彼が初めてだった。
私達は微笑んで応える。
雨が止んだら景色は変わる。
外も内もーーー。
「ーーー約束!!」
それは遥か遠い宇宙での出会い。
ーーー君だけではないよ。
私達は再び宇宙を駆ける。
今度は彼も一緒に。
それぞれ、
止まない雨を背負いながらーーー。
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