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「さっちゃんは何にするか考えてるの?」 商業ビルやデパートの並ぶエリアに歩いて向かいながら、俺はさっちゃんに尋ねた。 「えーと、香緒ちゃんのは大体決まってるんです。後はまだ……」 歩きながら俺を見上げ、さっちゃんはそう言う。 「じゃあ、そっちを先に見に行く?俺も実は何も浮かばなくてさ」 「ですよね。毎年悩んじゃいます」 笑うさっちゃんは、とにかく可愛い。手を繋いで歩けたら、どんなにいいか。でも、テーマパークみたいな手を何度も使えないし、仕方なく並んで歩くしかなかった。 「ここなんです……。睦月さん、入り辛かったら店の前で待ってていただいても……」 そう言って連れて来られた店は、ボディケア用のアイテムを中心に売られているお店。明るく華やかな店内からは、何となくふんわりと花のような香りが漂って来た。 「え?俺も一緒に行くよ?一人で入る事なんてないしね」 そう言って、一緒に店内に入ると、さっちゃんは早速商品を見始める。 その様子を着いて歩いて眺めていると、なんとなく何を選ぶのか分かった。 「もしかして、ハンドクリームにするの?」 見本を手にしているさっちゃんに尋ねると、顔を上げて「そうなんです。毎年ここのお店のにしてて。今年はそうしようかな?って」と答える。 「モデルは手も重要だもんね」 そう言って俺も近くにあった商品を手に取って見る。なんとかの香りって書いてあるけど、全くどんなか分からない。 「さっちゃん、手、見せてくれない?」 俺の突然の言葉に、「え?」とさっちゃんは言いながら、手相を見せるように手を差し出す。 その手に手を添えて裏っ返すと、さっちゃんの手の甲に持っていた見本を少し塗ってから両手で伸ばす。 さっちゃんは何も言わないけど、俺がやる事を顔を赤らめて見ている。 こんな事でもしないと、君に触れられないんだ。ごめんね? 心の中で謝って、その手を持ち上げる。 「む、睦月さん⁈」 我に返ったように慌ててさっちゃんが言うのを気にする事なく俺は顔を近づけた。 童話の中の王子様が、お姫様にキスするように。 「へー。こんな匂いなんだ。いいね」 俺が顔を上げると、恥ずかしそうにしているさっちゃんの顔がそこにある。 「なっ何で私で試すんですか⁈」 もちろん、さっちゃんに触れたかったからだよ?何て言えるはずもなく、「おっさんが試してたらおかしいかな?って思って」と俺は笑った。
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