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さっちゃんはいくつか商品を選んでラッピングしてもらい、小さな紙袋に入ったそれを受け取っていた。 「お待たせしました」 会計まで着いて行くのも、と少し離れたところで待っていると、さっちゃんはそう言いながら小走りにやって来る。 「じゃあ次行こうか。後は何がいいんだろうね?」 「希海さんにはお酒にしようと思ってるんですけど、今年は武琉君にもって思うと浮かばなくて。好みが分からないし」 並んで歩きながら、さっちゃんはちょっと困ったような顔を見せた。 「確かにねぇ……。と言うか、食べるものにするの?」 「消えて無くなる方が気を使わせなくていいかな?って思って」 「なるほどなぁ……」 確かにそうだよなぁと感心する。さっちゃんを慰労する会なのに、結局さっちゃんが用意するプレゼントの方が高かったら意味ないだろうし。 「デパートでも見ようか。いい?」 ちょうど歩いている先にデパートが並んでいる。 「はい。そうします」 笑みを浮かべて俺を見るさっちゃんと、デパートの地下に向かう。 そこは思ってた以上に人で溢れていた。 「人、凄いね……」 圧倒されながら俺が言うと、さっちゃんから「クリスマスも近いから……。いつもより混んでます」と返って来る。 「これはちょっと……」 ……はぐれそう。さっちゃん小さいし。 そんな事を思う。 はぐれても電話すればいいんだろうけど、それも何だかなぁ、何て思ってふと思い付く。 「さっちゃん、手繋いでいい?」 人が行き交う入り口で、さっちゃんに聞こえるように顔を寄せて尋ねる。 「えっ!」 さっちゃんは驚いたようにこっちを見ている。 「はぐれちゃったら困るし、さっちゃんの方が売り場はよく知ってそうだから、連れてってくれると嬉しいな?」 半分本当で半分嘘。 何か悪い男の囲い込みみたいになってるのは自覚してるけど。 「そう言う……ことなら……」 さっちゃんは、恥ずかしそうに頷いてそう言う。 そんな顔も可愛いなぁって思いながら「ありがと」と返して、そっと手を重ねた。 今日は冷たくない小さな手。その手を軽く握ると、さっちゃんも同じように握り返してくれた。 「じゃあ、どこから回ろうか?」 顔を覗き込むようにして、さっちゃんに尋ねる。 「あ、の、お酒コーナーが一番奥なので、そこから……」 物凄く照れた顔で答えるさっちゃんの反応が新鮮で心臓が跳ねる。 手を繋いだくらいで、理性を試されるなんてね? だんだんと熱くなる自分の手を意識しながら、さっちゃんに寄り添うように俺は歩き出した。
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