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二重にした紙袋に入れて貰ったグラスを持って、俺達はまた人で溢れる地下に戻った。 希海のは決まってるし最後にしようと、スイーツ売り場を散策する。勿論ちゃんと手を繋いで。 「意外と日持ちするものって限られてくるね」 「ですね……」 ショーケースの中は煌びやかなスイーツで溢れているのに、1週間後に渡すことを考えると、それ以上日持ちするものに限られてしまう。ほぼ、「美味しそうだねぇ」と、指を咥えて素通りするだけになってしまう。 結局無難なのは焼き菓子で、綺麗な缶に入ったクッキーの詰め合わせに決まった。 それから希海用のビールを買って、何とか全員分のプレゼントが用意出来た頃には流石に大荷物になっていた。 「睦月さん自分で持ちます!」 さっちゃんは、買ったビールを店員さんから受け取る俺に、慌ててそう言うが、見た目より重い荷物をさっちゃんに持たせるなんて出来ない。 さっちゃんの買ったビールと、自分の買った木箱入りのグラス。さすがに片手では下げられなくて、両手に下げる事になってしまうから手が繋げないのは残念なんだけど。 「重いから俺持つよ?それより、迷子にならないようにどっか掴んどいてくれない?今は見失う自信しかないし」 笑ってさっちゃんにそう言うと、さっちゃんは戸惑いながらも、そっと俺の腕に手を添えた。 どうしよう……無茶苦茶可愛いんだけど 恥ずかしそうに視線を泳がせているさっちゃんを見て、俺はそんな事を思う。そのまま一緒に歩いて、人を避ける度、俺に寄り添うように近づくさっちゃんの気配を感じて嬉しくなる。 周りから見たら、恋人同士に見えてるかな? 勿論、周りの人はそんな事気にしてなんかないけれど、自分は気にしてしまう。 そう見えてたらいいなって、そうなれたらいいのになって。 デパートを抜けて外に出ると、人を避けて歩くほどではなくなる。さっちゃんはそこで添えていた手を下ろした。 本当は凄く寂しい。けど、理由もないのにずっとそうしてて欲しいなんて言えない。 「一旦車に戻るけど、あと何処か寄りたいところある?」 少し後ろを歩くさっちゃんに、振り向きながら尋ねると、俯き気味に歩いていたさっちゃんは弾かれるように顔を上げた。 「えっ!あ、特には……。あの、今日はありがとうございました。荷物まで持たせてしまってすみません……」 さっちゃんは、寂しそうに見える顔でそんな事を言った。 もしかして、もう帰りたいのかな? 時間はまだ夕方に差し掛かった時間。まだ早い、と言っていいような時間だった。
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