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希海さんも懐かしそうな顔を見せて、「そう言えばそうだったな」と口にした。 「僕と希海の両親ってさ、その時の睦月君の年齢には結婚してたから不思議に思わなかったけど、今思えばすっごい結婚願望強かったよ?」 香緒ちゃんは、ちょっと考えるようにそう言って、グラスを口に運んだ。 「だが睦月さん、司に変な事言って引かせてたぞ?」 「変な事?」 思い出したように希海さんが言った台詞に、香緒ちゃんは興味津々で尋ねる。 「あぁ。結婚はしたいけど、身内以外の誰かが家にいるのを想像出来ないって」 思わずそこにいた全員が、無言で希海さんの顔を見た。 「……それ、どう言う事?」 同じ事を思っていたらしく、香緒ちゃんは私の代わりに尋ねてくれた。 「さぁ?真意は分からない。俺もまだ中学生だったし。でも、睦月さんが未だに結婚してないって事は、そんな想像が出来る相手がいなかったって事じゃないのか?」 涼し気に、低い声でそう話すと、希海さんはグラスに残るワインを飲み干した。 私はと言うと、正直戸惑っている。 私が知っている睦月さんは、物凄く家庭的で、いい旦那さん、いいお父さんになりそうな雰囲気しかないのに。 それに……睦月さんの家で一緒に過ごした事のある私は、一体どんな存在なんだろうかと。 「じゃあさ、」 ふと香緒ちゃんが何か思いついたように声を上げたタイミングで、部屋の中にインターフォンの呼び出し音か響いた。 「あ、俺出るよ」 武琉君はそう言うが早いか、すぐに玄関の方へ向かった。 「睦月君、やっと登場だね!」 香緒ちゃんがニコニコと私を見ながら言うのを、私は顔を引き攣らせながら「う、うん……」と答えた。 睦月さんに会うのは1週間振り。前、あんな不自然に帰った私を、睦月さんはどう思ったんだろう?って、今更心配になって来た。 遠くの話し声が近づいて来て、リビングの扉が開くと睦月さんが飛び込んで来た。 「みんな待たせてごめん!」 まるで全力疾走でもして来たように睦月さんは息を切らせている。 「お疲れ様!」 「「お疲れ様です」」 そう言ってそれぞれが声を掛けるが、何というか……本当に疲れ切っている様子だった。 香緒ちゃんは立ち上がると、その場に立ち尽くす睦月さんの背中を押しながら「まーまー座って座って」と、ずっと空いていた私の隣の席に睦月さんを誘導した。 「ちゃんと睦月君の分取り分けてるからね?あ、ビール飲む?さっちゃんが希海にくれたやつ」 後ろから覗き込むように香緒ちゃんが尋ねると、睦月さんは「あ、俺、残念だけど車で来た」と返事をした。 「だよね?そうだと思った。睦月君にはノンアルのビール用意してるから、今日はそれで我慢ね!」 疲れた表情の睦月さんとは裏腹に、香緒ちゃんは楽しげにそう言った。
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