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「じゃあ、改めて。今年一年お疲れ様でした!来年もよろしくね!」
睦月さんが音頭を取り、皆で乾杯する。それから睦月さんは、ノンアルコールビールを勢いよく飲み干すと、タンっとグラスをテーブルに置いた。
「それにしても、えらく押したね?大丈夫?」
疲れた表情の睦月さんに、香緒ちゃんがそう尋ねる。
「結局2時間近く……。それがさ、今日のモデルの子が、クリスマスイブなのに彼氏に振られた!何で自分は仕事しなきゃいけないの⁈ってごね始めちゃってさ……」
思い出すだけで疲れた顔になっている睦月さんは、手酌でビールをグラスに注いでいる。
「うわぁ……」
香緒ちゃんが向かい側から同情するようにそう呟いた。
「宥めるの大変だったよ……。代わりに俺にデートしろとか言い出すしさ、もうホント、勘弁して欲しい」
その言葉に、私はドキッとしながら睦月さんを眺めた。
デートって……するの?……と。
「で、どうしたの?デートするわけ?」
香緒ちゃんが憐れんだような顔で私の心の声を代弁すると、睦月さんは顔を上げて力なく笑う。
「するわけないでしょ。とりあえず彼女のマネージャーさんが合コン企画してくれて、ようやく機嫌直してくれたよ」
「じゃあ、その合コンに参加するんだ」
香緒ちゃんが、当たり前と言うように睦月さんにそう返すと、「しないからさ!こんなおっさん参加してどうするんだよ?」と睦月さんは自虐的に口にした。
私はそれを聞いて、睦月さんに悟られないようにホッとする。
綺麗な子に囲まれてる睦月さんなんて想像したくないし、見たくはないって言うのが本音だ。
「睦月君、彼女欲しいんでしょ?参加すれば良かったのに」
グラスを口に運びながら香緒ちゃんが言うのを、睦月さんは少し顔を顰めながら見た。
「いや……彼女は……欲しいけどさ」
バツの悪そうな顔で口籠もり、睦月さんはそれを紛らわせるようにビールを呷る。
「あ、そうだ!忘れないうちに渡しとく!」
微妙な空気を打ち破るように睦月さんがそう声を上げて、傍に置いた紙袋から包装された箱を取り出すとテーブルに並べた。
「はい。皆にサンタさんからのプレゼントね!」
そう言うと、睦月さんは箱を確認しながらそれぞれにそれを渡し始めた。
「今日は響君いないんだ。これ渡しといてね」
希海さんに先に箱を渡してから睦月さんがそう言うと、希海さんは「響にまで……。ありがとうございます」とそれを受け取る。
私が皆の様子をニコニコしながら眺めていると、隣から声がした。
「はい。これ、さっちゃんに」
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