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「へ?」 驚きすぎて変な声を出して、隣に立って箱を差し出す睦月さんの顔を見上げてしまう。 「さっちゃんにも勿論プレゼントしたかったから。受け取ってくれる?」 さっきまでの疲れた顔など微塵も見せずに、睦月さんは私に笑いかけてくれている。 「は、はい!ありがとうございます」 そう言って、私はおずおずとその箱を受け取った。皆と同じ大きさの箱。もしかして……と思いながらその箱を大事に手にした。 「開けて開けて!」 睦月さんは座り直すと、嬉しそうに皆を急かす。 カサカサと包装紙の剥がす音が響き、皆それぞれ箱から中身を取り出した。 「何で……分かったんですか?」 取り出したグラスの柄を見て、私は思わず睦月さんに尋ねる。そんな私に体を向けて、睦月さんは覗き込むよう笑顔を見せた。 「それ、ずっと見てたから気になってたのかな?って思って」 そんなにずっと見てたつもりはなかったのに…… 目の前にある、桜の花をモチーフにしたピンク色の可愛いグラス。何となく目を引いて、綺麗だなぁって眺めただけなのに、睦月さんがそんな私に気づいてくれてた事に嬉しくなる。 「ありがとうございます……。大切にします」 「どういたしまして」 私を見ながら笑ってくれるその顔を見て、来る時に香緒ちゃんが言ってた事を思い出す。 睦月さん、鈍感……じゃないと思うんだけどな…… じっと私を見ている睦月さんの顔を、ついそんな事を考えながら見返してしまう。 「へ〜……。さっちゃんと選んだんだぁ」 香緒ちゃんが唐突にそんな声を上げ、私達はハッとしながら向かいを見ると、香緒ちゃんはグラスを手にニコニコ笑っている。 その隣で、「ありがとうございます。睦月さん。大事に使います」と武琉君が緑色のグラスを手に睦月さんにお礼を言った。 そして香緒ちゃんは「うん。嬉しいよ。ありがとう、睦月君。そっかぁ……さっちゃんとねぇ……」と何故か少し棘のある言い方をした。 さっきから香緒ちゃんの様子が何となくおかしい。何故か睦月さんに絡んでいるように感じる。もしかして……と思っていると、希海さんが溜め息と共に香緒ちゃんの方を向いた。 「香緒。酔ってるだろう?」 「え〜?酔ってないよ〜?」 香緒ちゃんはそう返すが、明らかに言動はおかしい。それに、すでにシャンパンを一人で1瓶空けている。あんまりお酒は強くない筈の香緒ちゃんが酔ってないとは思えない。 「香緒。もう水にしろ。持ってくるから」 そう武琉君が言って立ち上がると、「酔ってないってばぁ!」と返す香緒ちゃんは、どう見ても酔ってるな、と私は思った。
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