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「そう言う香緒は、いったいどっちなのさ……」
もうすっかり諦めの境地で尋ねる睦月さんに、香緒ちゃんは悪戯っぽい笑顔を向けた。
「僕はもちろん、してる、に賭けるよ?」
そうきっぱりと睦月さんに向けて言うと、香緒ちゃんはその横の私に視線を動かした。
もしかして……香緒ちゃんは、その相手が私だったらいいと思ってる?
そのくらいにニコニコしながら、私を見ていた。
「香緒……ギャンブラーだなぁ……」
睦月さんは、そんな香緒ちゃんを見ながら、面食らうように呟く。
「あ、睦月君、僕が適当に賭けてると思ってるでしょ?あのね……、一つ言っとく」
香緒ちゃんは余計に酔いが回ってきたのか、よりフワフワした様子を見せながらも、はっきりした口調で続けた。
「人が恋に落ちるのに、時間も会った回数も関係ないからね?それ、もちろん睦月君は実感してるよね?チャンスは自分で掴まなきゃ!」
まるで睦月さんだけじゃなくて、私にも言っているように、香緒ちゃんは時々私の方を見る。
私だって実感してる。
武琉君に再会して半年程で結婚式を挙げた2人に、睦月さんに一番身近な長門さんと瑤子さん。
私だって、チャンスが訪れるならそうしたいよ……
そう思いながら、チラリと横にいる睦月さんを見ると、ちょっと驚いたように目を開くその人と目が合った。
私が睦月さんがこっちを見てた事に驚いていると、そんな私を気にする事なくニコリと笑ってから香緒ちゃんの方を向き直した。
「でもさ、さすがに1年は無理でしょ」
そんな睦月さんに、香緒ちゃんは両手を握り自分の両脇で降りながら、「何言ってるの睦月君!弱気!頑張って!」と励ますように言った。
「そうだね。頑張るよ、香緒……」
睦月さんは、そんな香緒ちゃんに、ふわりと笑いながらそう答えた。
「財閥VSスペシャルシェフの戦いだね。ごめんね武琉。負けちゃっても僕、材料費出すのとお皿並べるくらいしか出来ないけど」
「大丈夫だ」
武琉君は、そう言って優しく香緒ちゃんに返す柔らかい空気感を、羨ましく思いながら私は眺めた。
その後、香緒ちゃんは突然「眠い!」と言い出して、武琉君に抱き抱えられ……もちろんお姫様抱っこで……この部屋を後にした。
「すみません。香緒が……」
希海さんは、ようやく本格的に食べ始めた睦月さんを前に、そう謝る。
「あぁ。気にしてないよ?香緒がお酒飲むところなんて、そう言えば初めてだけど、いっつもあんな感じ?」
睦月さんは、笑顔を浮かべて希海さんに尋ねる。
「たまに……。特に家で飲むと気が緩むみたいで。今日は特にいつもより浮かれてたみたいです」
希海さんは頭を抱えるようにして、そう答えた。
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