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興奮気味のはなちゃんを抱き上げたまま、睦月さんもかんちゃんの様子を見守っていた。かんちゃんは、恐る恐る睦月さんに近づくと、足元の匂いを確かめるように嗅ぎ始め、周りをグルグル回った。 そして…… 「かんちゃん?」 睦月さんが、驚いたように名前を呼ぶ。 かんちゃんはさっきの、はなちゃんのように睦月さんの足に自分の脚をかけ、軽く吠えている。 でもその尻尾は、今まで睦月さんに見せたことないくらいに、嬉しそうにブンブン振っていた。 睦月さんは、はなちゃんを抱えたまましゃがみ、はなちゃんを下ろすとその膝に脚を置くかんちゃんの背中をそっと撫でていた。 「もしかして、俺のこと……認めてくれた?」 私に見せてくれるような、凄く優しい顔。そんな顔を見せる睦月さんに答えるように、かんちゃんは吠えてみせた。 「あらあら。良かったわねぇ、かんちゃん。お母さんの次はお父さんが出来たのね?」 娘さんがマッタリした雰囲気でそう言うと、はなちゃんはそちらへ駆け寄って行った。 「かんちゃん……。良かった……」 本当にホッとした。かんちゃんが認めてくれなかったら、お父さんにも認めてもらえない、それくらい重く受け止めてたから。 その場に立ち尽くしていた私の元へ、今度はかんちゃんを抱き上げた睦月さんがやって来る。 かんちゃんはその腕の中で、ハフハフ言いながら私の方を見て、そして涙を掬い取るように顔を舐め始めた。 「擽ったいよ、かんちゃん!」 泣き笑いの私に遠慮することなくかんちゃんはベロベロと私の顔を舐めて愛情表現してくれていた。 そして睦月さんは、そんな私たちにお父さんみたいな優しい眼差しを送ってくれていたのだった。 少し遠いけどせっかくだから、とサロン近くに停めた車はそのままに、私の家まで散歩しながら帰ることにした。 私は自分のスーツケースを持ち、かんちゃんのリードは睦月さんに持ってもらって。 かんちゃんは、今までの態度が嘘のように嫌がることなく睦月さんの前を歩いている。時々振り返っては、嬉しそうに吠えていた。 「本当、夢みたい。かんちゃんと散歩できる日がくるなんて」 睦月さんは大袈裟なくらい喜びながら歩いている。 「これからはいつでも一緒に散歩できますね!」 「だね。それに……これからはかんちゃんを連れて、俺の家にお泊まりできそうだね?」 ワザと私の耳元で小さく囁くように睦月さんはそう言う。 私は擽ったくて肩をすくめながら睦月さんを見上げる。 「期待……してますよね?」 顔を赤らめながら尋ねると、睦月さんはさも当たり前のように「もちろん!でも、さっちゃんの無理のない範囲でね?」と笑っていた。
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